ただいま二章<剣と弓>








「ふぅー、やっと終わったか……」

俺は机に突っ伏して大きく息を吐き、長かった一日を振り返った。


「一年のうち、一日や二日ぐらいはこういう日もある。あまり気にせぬことだ」

「いや、それにしても今日の衛宮の不幸っぷりは凄かったね」


くっくっと笑う美綴は楽しそうだ。
やれやれと一成はそんな美綴を見ている。

今日の俺の不幸物語はそれほど酷いものだったのだ。

もう犬も歩けば棒に当たるレベル。
俺が歩けば不幸に当たるって感じだ。

体育の授業でサッカーをやれば盛大に転倒し、
授業中は重要な宿題ばかりを家に忘れ、
廊下を歩けば頭からバケツがバッシャ―ンで、
食堂では誰かの投げたうどんが顔面直撃だ。

晴れやかに迎えた朝がウソのように、俺の気分も沈みっぱなしだ。

「衛宮、この後はどうするのだ?
俺は生徒会室にて用事がある。お前が暇ならば茶でも馳走しようと思うが」

「いや、今日はもう帰るよ。
最近はバイトもしてないし、こういう日は家でゆっくりするのが一番だ」

家にはセイバーがお腹をすかして待っている、遠坂がいない分早く帰ってやらないとな。

「ん? 衛宮、最近バイトやってないんだ。
だったら弓道部に寄ってかない?たまにはあたしの射を見ておくれよ」

「だから今日は帰るって。その話はまた今度な」

「ちぇ、いつもまた今度なんだよね、衛宮って。
せっかく遠坂のいない今がチャンスなのになー。
まぁ今日は大変だったから勘弁しておくよ、遠坂が帰ってくる前に一度は来てくれよな」

美綴はずっとこんな調子だ。
もう俺たちも三年だというのに、未だに俺を弓の世界に引きずり込もうとしている。
俺に何のこだわりがあるのやら、今では美綴の方が段も上だろうに。
どうやらコイツにとって、俺はいつになっても越えられない壁らしい。

とはいえ、いくら誘われても再び弓道を始める気は毛頭ない。
はっきり言って俺の弓は邪道だ。魔術という『ずる』をしている時点で、俺に弓道を志す資格なんてないのだろう。
約束ではあるので、いつかは美綴と勝負する事にはなるだろうが、それは間違いなく今ではない。

「ああ、また今度必ず顔を出すから、今日のところは帰るよ」

二人の友人に別れの挨拶をして教室を出た。

昇降口で靴を履き替えつつ、不幸だった今日一日を反芻する。

―――それにしても酷い一日だった。

いつもと何一つ変わらない筈の俺。
ただひとつ違うとすれば、俺の隣にはアイツがいない。
まさか遠坂がいないだけで俺の運は最悪になるのだろうか?
その推理でいくと今日からの一週間、もしや俺はずっと不幸なのかもしれない。


「アイツ、俺に不幸バッドラックの呪いとかかけてないだろうな?」

んで、
やっぱりわたしがいないとダメねー、士郎。オーホッホッホッ
とか。

ああ、遠坂様。僕は貴女がいないと生きていけません……
なんてな。

「アホらし。なに考えてんだろ、俺」

どうやらあまりの不幸っぷりにちょっとネガティブになってたみたいだ……反省。


「―――先輩。これから帰るところですか?」

不意を突いて後ろからかけられた声は聞き覚えのある後輩のものだった。
―――まさか今のを聞かれてないよな?

「あ、ああ、これから商店街によって帰ろうと思ってさ。
ほら、朝食で冷蔵庫の中身全部使っちゃっただろ?
今日の夕食分を買い足してこないとなー」

笑顔で俺の隣に並ぶ桜は、弓道着姿ではなかった。
制服のままという事はこれから帰るところなのだろう。

「あ、なら私も一緒に行っていいですか?
今日の部活は自由参加だったんでお休みしちゃいました。
姉さんがいないですから、今日ぐらいは早く帰ろうかなって思いまして」

俺の隣で楽しそうに笑う桜。
ここ数ヶ月の桜は本当に良く笑うようになった。
一年前とは大違い。それだけ充実した毎日を送っているのだろう。
その健康的な姿はとても瑞々しいのだが……

「桜、遠坂がいなくて寂しくないか?」

「は?寂しい……ですか?
それはもちろん少し寂しいです、でも、たった一週間ですから我慢できちゃいます」

そう、たった一週間だ。
しかし、来年の春が来れば俺たち三人はロンドンに渡ってしまう。
そうなったら桜はまた一人だ、その時、桜は今のように笑えるのだろうか……
五人の幸せな共同生活が終わり、桜が今のように笑えなくなるとしたら。
俺が選んだ事とはいえ、それはとても辛い事なのだと思った。

「え?どうしたんですか、先輩?急に疲れたような顔をして。
―――あっ、先輩も寂しいんですねー。でも一週間の辛抱ですよ。
そしたら姉さんに思いっきり甘えても今回だけは許してあげますから、今は元気を出してください」

どうやら相当暗い顔をしていたのだろうか。
桜に余計な心配をかけてしまったらしい。

「ああ、遠坂がいないせいかは分からないが、今日はホント散々な一日だったよ。
朝から不幸の連続でな、ちょっと気分が滅入ってたんだ。
こういう時は豪華な夕食を作るに限るよな。
というわけで、今日は超豪華な夕食に決定! 桜、一緒に作ろうか?」


「へぇー、散々で不幸な一日だから不幸バッドラックの呪いですか?
それはすこーしだけ安直じゃないでしょうか、先輩♪」

「!!」

「えーっと、桜さ・・ん・・・?
もしかして聞こえていたのでしょうか?」

「先輩♪姉さんはそんなことしませんよ、絶対。
冗談でもそんなこと言わないでくださいネ」

ニコニコと笑っているけど、桜は怒っている!!
こうゴゴゴゴゴッって感じで怒気が聞こえるくらい怒ってマス。

「うわっ、悪かったよ、桜。
確かに冗談でも言っちゃいけないことだったよな、スマン」

「はい、これからは気をつけてくださいね、先輩。
今回は私の胸の内にしまっておきますけど、次があったらキチンと姉さんに報告しますから」

「……はい、以後気をつけます」

「はい、今日の教訓は『壁に耳あり障子に目あり』でしたー」

指をピンと立てて得意顔の我が後輩。
なんか桜のやつ、だんだん遠坂に似てきたような気がするぞ。
でもまあ、桜が遠坂のことでアレだけ怒るのも嬉しいことなんだよな、やっぱ。

「それじゃあ先輩。その話はもうおしまいにしましょう。
―――それで、今日の豪華な夕食は先輩のおごりでいいんですか、本当に?」

「えーっと、おごり?俺の?なんで?」

「はい♪先輩のおごりで。そうですねー、ステーキなんていいんじゃないでしょうか。
セイバーさんも喜ぶと思いますよー、ね、いいですよね」

「あのー、拒否権なしですか、俺には……
確かにセイバーにはアレ以来ステーキを作ってあげてないし。
あの時はすごく喜んでたし、豪華にしようって言ったのは俺のほうだし。
―――はあああああっ、しょうがないか……」

あー、今日の夕食は諭吉さんが飛んでいきます……
ストレス解消に料理を使うのは止めた方がいいのかも、俺。

「ふふっ、先輩ならそう言ってくれると思ってました。
―――ウソですよ。私も半分費用を出します。だから一緒に作りましょうね、先輩」

「うぅ〜。桜ありがとぉ……ホントは今月ぴんちだったんだ」

桜の心遣いに涙が出る。
こういう姿は男としてどうかと思うが、生活には変えられない。

「はい、分かってました。だって最近先輩はバイトをしなくなりましたからね。
剣の稽古や魔術の勉強もいいですけど、玉にはアルバイトも大事ですよ」

「はい、肝に銘じておきます」

すっかり尻に敷かれている俺だった……




などと二人でたわいのない話をしながら商店街に向かう。
その道中、交差点に足を踏み入れたその時。
交差点のどこからか視線を感じた。

―――ん、これは……見られている?

桜は気づいてないようだ。
だが、俺たちを監視する気配を確かに感じる。

俺は魔力を周囲に展開し、視線の主を探してみた。
周りには買い物姿の主婦達が数人。
どうやらこの人たちは関係ないようだ。

という事は『敵』は少し離れたところから俺を見ているのだろう。

―――敵?

俺は今、無意識に敵と認識していた。
この視線に敵意はない、なのに敵と感じるのはどういう意味があるのだろう。
つまり俺はこの気配をどこかで敵として知っているということか。

「先輩……どうしたんですか?―――今の……魔力ですよね?」

ハッと気づく。
隣には心配そうな桜の顔。
どうやら俺の魔力には気づいてしまったようだ。
かなり派手に魔力を展開したから、桜になら気づかれるのも当然か。

「いや、変な気配を感じたからちょっと探ってみただけさ。
それに今はもう消えてる。桜が心配する必要は全然ない」

「先輩……」

「そんな心配そうな顔をするな、桜。
大丈夫だから―――みんなは俺が守るから」

不安そうな桜を安心させるためにも俺は力強く宣言した。

「はい、先輩。
でもあまり無茶はしないでくださいね。もし先輩が死んじゃったら……」

「だから大丈夫だって。俺はそう簡単に死にはしないさ。もちろん無茶もしない」

「はい、無茶なんてしないでください、お願いします……」

「ああ、でもその話はもう終わりだ。
そんな話よりも今日の夕食を決めないとな。
夕食の時間に間に合わないとセイバーが怒り出すぞー。
アイツは飯をあげないと理不尽な性格になるんだ」

がぉーーーっと牙をむくセイバーの真似をする。

「もー、酷いですよ先輩。セイバーさんが聞いたら絶対怒ります」

「大丈夫だ!もう獅子の手綱さばきはバッチリだからな。俺の場合」

「獅子ってセイバーさんのことですか?
それってピッタリ。セイバーさんってライオンのぬいぐるみとかストラップとか大好きですものね」

ぷぷっと桜に笑い顔が戻った。
ははっ、俺も釣られて笑う。
俺たちは二人揃って幸せに歩く。

ロンドンの事とか、今の視線の事とか、そんな事はきっと些細な問題だ。
来年の事はその時までに考えればいいし、敵が現れたら全てを賭けて戦うだけだ。

ただ、今の俺は昔とは少し違う。
空っぽだった少年の心はこんなにも温かい光が満ち溢れている。
―――俺は簡単に死ぬ事はできない。
必ず生きて帰ってこそみんなが幸せになれるのだから……







買い物を終えて家に着くと、門の鍵はまだ閉まっていた。
俺たちが学校に行く時は、今までどおり鍵は閉めておくことにしている。
結界にも綻びはない。セイバーはきっと中で寝ているのだろう。

桜と並んで屋敷に入り、俺は客間へとセイバーを迎えに行った。

「セイバー、起きてるか?」

ドアをノックし、セイバーを呼んでみる。

「シロウ?もう帰ってきたのですか」

ガチャリとドアが開き、いつもどおりの服装でセイバーが現れる。

「なんだセイバー、起きてて大丈夫なのか?」

「はい、どうやら思ったよりも魔力の消耗は少ないようです。
これなら食事さえしっかり摂れば、多少の戦闘も可能と思われます」

「そうか、それは都合がいいや。
実はセイバーに相談があったんだ。
夕食までの間、稽古がてら話を聞いてくれないか?」

「相談―――ですか。
どうやら余り良い話ではないのでしょうね。
では、今から道場に向かいましょうか」

「ああ、俺は桜に一声かけてくるから先に行っててくれ」

セイバーと別れ、台所の桜に「道場にいる」と声をかける。
桜は久しぶりのステーキに気合が入ってるようだった。
夕食の準備の時間になったら呼びますから、と下ごしらえを始めてしまった。

「待たせたな、セイバー」

道場で正座をしつつセイバーは静かに俺を待っていた。

「いえ、それで話とはなんでしょうか?シロウ」

静かに近づいてくるその表情は真剣で、俺も自然と気が引き締まる。

「ああ、実は今日の帰り際に妙な視線を感じたんだ。
交差点のあたりなんだけど、俺たちを観察するような感じだ。
一応魔力探知をしてみたんだけど、俺には姿を見つけられなかった。
それで、その視線に敵意はなかったんだけど、俺は敵だと感じたってのも付け加えとく」

「敵意がないのに敵なのですか?言ってる意味が分かりませんが」

「敵意がないのに敵だと感じたんだ。それで十分敵だろ?」

「敵だと分かる気配ですか……シロウはその気配の主を知っているのですか」

「ああ、断定はできないけどな。
それにこの町にいるはずもないんだ。だってそいつはもう死んでいる筈なんだから」

俺は黙って二人の竹刀を取る。
一方の竹刀をセイバーに投げ、俺自身も構える。

「家にいる限りは結界があるから大丈夫だろう。
俺も外に出ているときは気を付けるから、セイバーも一応注意しておいてくれ。
遠坂が帰ってきたら相談してみるからさ」

「シロウ?剣の稽古をするのですか?」

「ああ、俺の話はこれだけだ。もしかしたら戦いになるかもしれないし。
こういう時だから剣の鍛錬は欠かしたくないんだ。朝に話した模擬戦は夕飯後でいいかな?」

正眼の構えを取る俺に対し、セイバーも同様の構えを取る。
分かりました、と一言答え、それが稽古開始の合図となった。









俺とセイバーの稽古は一言で言えば読み合いだ。
お互いの先手先手を取り合い、先んじて剣を振るい、剣を避ける。
俺の心眼(真)とセイバーの直感。
似て非なる両者のスキルは、一重に俺たちのレベルの接近した証だった。

だがそれでも俺は未だにセイバーから一本も取れずにいた。
セイバーがどれだけの余力を残しているのかは分からない。
ただ、未だに取れぬ一本が大きな壁としてセイバーとの間に立ちはだかる。

俺は自分がどれだけ成長しているのかがわからなかった。
その小さな最初の目標を達成できれば、俺は自分が強くなったと実感できる。
はずなのだが……

時間にしてみれば一時間。少し短めの鍛錬の終了は、セイバーの一撃が告げた。
お互いの先を読みあう精神戦が終わるのは、決まって俺のミスからなのである。
空振りの隙を付くセイバーの小手に、俺の体が反応できなかったのだ。

カラン、と竹刀を床に落とす。
見事に決まったセイバーの一撃に、俺の手は痺れたままだ。
時計を見るともうすぐ6時、夕食の準備の時間である。

「いててっ、くっそー、今日もダメか。
最後はいつも自分の反応に体がついてこないんだよな、俺って」

手をさすりつつ、今の戦いを反省する。
セイバーは相変わらず汗一つかいていない。

「いえ、シロウの実力は既に相当なレベルに達しています。
特に読みは素晴らしい。私の剣をこれほど読める者は私が王の時代にもいませんでした」

そうは言ってもいつも俺がやられて終わるのはさすがに悔しい。
早いところセイバーから一本とって悔しがらせてやりたいものだ。
まぁ、セイバーはお世辞とかはいえないタイプだから、今は自分の上達を喜んでおくべきか。

「ああ、ありがとうセイバー。
セイバーがそう言ってくれるのなら心強いよ。
これからもより一層の指導をよろしく頼む」

言いつつ竹刀を片づける。
今日は桜と一緒に夕飯を作る約束だ。台所に向かわなければならない。

「シロウ?夕食を作りにいくのですか」

「ああ、今日は桜と一緒に作る約束なんだ。
それに今日はセイバーの大好きなステーキだぞっ。
美味しく作るから、居間で待っててくれないか」

「なんと♪シロウのステーキは久しぶりですね。
あの時のステーキの味は今でも忘れられません。しかもあれ以来シロウは作ってくれませんでしたから」

ジト目で睨むセイバー。やっぱりずっと待っていたのか……

「うっ、それはな、ステーキ肉って高いんだよ。
だからたま〜に食べるのが真の贅沢ってやつなの!」

「はい?ではなんで今日がたま〜の贅沢なんですか?もしかしてリンがいないからでしょうか」

「げげっ、遠坂がいないから贅沢した、なんて死んでも言っちゃダメだ。
っていうか俺が殺される。絶対内緒だぞ、セイバー」

「シロウ、魔術の基本は等価交換です。
魔術師ならその辺の事情は分かっていただけると思いますが」

ニヤリとセイバーさん邪悪顔。
おいセイバー、いつの間にそんな交渉テクニックを!?

「う〜。分かったよ、今日のステーキはセイバーだけ二人分用意するからさ。
な、それでいいだろ?破格の条件だぞ」

「シロウ、それでは私が二人分食べたいと言ったように聞こえてしまう。
ですが、シロウがどうしてもというのなら仕方がありません。
私も魔力の補充のために最低限の食事は必要ですから」

それは、二人分食べたいって言ってるようなもんだろ。
しかも、俺はどうしてもなんて言ってない。
さらに、二人分で最低限ですか。
つっこみどころ満載のセイバーの返答に、もはやつっこむ気すら起きない。

どうやら衛宮家での俺の立場は最下層で決定らしい。
みんなにいじめられる俺に誰か愛の手をください……







その日の夕食は戦場だった。

まぁ虎とライオンじゃ肉が好きなのも頷けるというものか。

「こら、ガツガツと食べちゃだめだ、はしたないぞ。」

「そこ、肉ばかり食べずに野菜も食べろよ、いくら魔力のためとはいえバランスも大事!」

さすがに虎と獅子の相手を同時にするのは辛い。
猛獣使いの気持ちがちょっとだけ分かった。

それにしても我が家のもう一人の猛獣は今日は静かだな……

「桜、どうしたんだ。あんまり食べてないじゃないか?
今日はせっかく一緒に作って、美味しくできたって喜んでたじゃないか」

どうしたんだろ?
俺としても今日の食事は良くできたと思うけどな。

「桜?」

「えーっと、そのー、実は今日の朝も豪華だったなーとか思い出しちゃいまして……」

「ん?朝も豪華だとダメなのか?」

「乙女の都合というものがあるんですっ!ね、セイバーさん」

桜は顔を赤くして正面のセイバーに振る。

「サクラ、私にはその都合というものは分かりかねます。
これほどの食事を用意していただき、二人には感謝の念が耐えません」

「〜〜っ、ね、藤村先生」

「ん〜、桜ちゃんの都合も分かるけど、ほら、私には関係のないことだし。
それより、士郎!なんでセイバーちゃんだけ優遇されてるのよ。
今朝もそうだし、贔屓よ贔屓。
おねえちゃんにも二人分用意しなさーい!!

ひーきひーき、とまくし立てる藤ねえを無視し桜に問いかける。

「おい、桜。乙女の都合ってなんだ?」

晩御飯を食べられないほどのことなのだろうか。
もしや体の調子が悪いとか……

「せ、先輩は黙っていてください!
そういうのは女性に聞くのは失礼なんですっ。先輩は
愚鈍だと思います!」

ぐ、愚鈍……?
『とーへんぼく』やら『へっぽこ』やら色々な俗称で呼ばれた俺ですら愚鈍は初めてだ。
ちょっとへこむ……

やーいやーい♪怒られたー、おねえちゃんを贔屓するからだー。
―――士郎のぐどん! それっ、ぐ・ど・ん♪ ぐ・ど・ん♪ ぐ・ど・ん♪


「タイガ、『ぐどん』とは一体どういう意味なのですか?初めて聞く日本語なのですが」

「え、私も知らないわよ、そんなの。
でも士郎のことなんだから、多分『女心が分からない』とか『デリカシーがない』とかで合ってると思うけど」

「ああ、それならその通りですね。愚鈍=『女心が分からない』と、インプット完了です。それにしても日本語は奥が深いですね、タイガ」

容赦なく俺の傷口に塩を塗り捲る獅子虎コンビ。
お、お前らなー、武士の情けって言葉を知らないのか!?
ちなみに、愚鈍=頭の働きが鈍く,のろまなこと(デイリーコンサイス国語辞典)だぞ、勘違いするなよなー。

くっ、自分で説明していて涙が出てくる。
昔の慎ましい桜は何処に行ってしまったんだろう。








騒がしかった夕食も終わり、俺たち四人は居間で食後のティータイムを楽しんでいる。
普段なら俺は遠坂の魔術講座を受けるのだが、その時間がぽっかり空いてしまっている。
セイバーに稽古をつけてもらうにしても、模擬戦だけに藤ねえのいる間はできない。
さて、どうするかと考えていると、桜が突然立ち上がった。

「先輩。今日はちょっと用があるんで早めに帰りますね。
今日の夕食、半分しか食べれませんでしたけど、美味しかったです」

桜はどうやら帰るみたいだ。
ココに泊ることも増えた桜だが、普段はちゃんと家に帰る。
この位の時間に帰る事もたまにはある。

そうだな、昼間の視線の事もあるし、しばらくは俺が送っていった方がいいかもしれない。

「ああ、じゃあ家まで送ってくよ。
ついでに遠坂の家にも用事があるから寄らなきゃならないし。
セイバー、今朝の用件だけど遠坂の家でいいだろう?その方が都合がいいし」

セイバーにアイコンタクト。
目と目で通じ合ってしまった。

「はい、私にはむしろありがたい、ご一緒いたします」

「じゃあ行こうか、ふたりとも。
それじゃ藤ねえ、9時くらいには帰るから戸締りよろしくな」

「ええ〜、みんな帰っちゃうの?おねえちゃん寂しいよぅ。
もうちょっとごろごろしようよー」

「食後にゴロゴロするのは良くないぞ、たまには竹刀でも振ってきたらどうだ。
なまってるんだろ、藤ねえ」

「ふーーっんだ、なまっても錆びてもまだまだ士郎には負けませんよーっだ」

「ほー、今の言葉後悔するぞ。いつか藤ねえをギャフンと言わせてやるからなー」

「わたしは誰の挑戦でも受ける―――ゴロゴロ、ゴロゴロ」

猫ですかい、あなたは。

ゴロゴロする藤ねえを置いて、俺たち三人は玄関に向かった。



外に出ると満点の星空が広がっていた。
深山町には派手な電飾などが無いので星がとても鮮やかに見える。
その星達を見上げながら、右隣を歩く桜にたずねる。

「桜、遠坂が何でロンドンに行ったか聞いてるか?」

俺と共に空を見上げていた桜は、こちらを見て答える。

「いえ、私も詳しい事は聞いていません。
ロンドンの下見……じゃないんでしょうか」

「うーん、それなら俺とセイバーも連れて行くだろ。一人で行くのはおかしいと思わないか?
俺にはもっと違う理由があると思うんだが」

「シロウ、その件ですが、リンは何かを取りに行くと言っていました。
そのついでに時計搭の下見もしているのではないでしょうか」

なにか……?時計搭に取りに行くのなら魔術に関係する物なのだろう。
魔具か、もしくは聖具?

「それに私を連れて行かなかったことには意味があると思います。
リンは先見の明に優れる人物です。不測の事態に備えているのかもしれません」

「そうか、冬木の管理者なんだよな、遠坂って。
もしもの時を考えて俺とセイバーを残しておいた、ってのはそれっぽい考えだ」

「はい、ですがこちらからはリンに連絡は取れないのですから、
帰ってきてから聞くしかありません。
それよりも先日シロウが感じた視線の事もあります。私たちも油断は禁物でしょう」

「そうだな……それと、桜。
しばらくは俺が桜を家まで送ることにする。
今日みたいに三人で帰ろう、桜は何も心配する事はないんだから」

心配そうに今の話を聞いていた桜の頭に、ポンッと手を載せる。
桜はちょっと俯きながらも、はいと言ってくれた。





桜と間桐邸の前で別れ、俺とセイバーは更に奥の遠坂邸に向かう。

「シロウ、模擬戦は庭でよろしいのですか?」

「ああ、庭なら十分な広さがあるし、結界のおかげで防音も完璧だ。
セイバーにとっても魔力の補充はバッチリなんだろ?」

「はい、この結界内なら私は通常とほぼ同じ魔力を使う事ができます。
それにしても何か新しい魔術でも覚えたのですか、シロウ」

「それは秘密だな。今朝見た夢で思い出したんだ。
俺は投影も使わないし、武器はこの竹刀一本と強いて言えばこの庭、かな。
大丈夫、セイバーを傷つけるような事はしないから」

「ほう、今朝も言った筈ですが。
まだまだシロウには十年早いと教えて差し上げましょう」

そうして俺たちは遠坂の庭で向きあう。
いつもの道場よりも広い分、間合いも広め。
俺たちは家から持ってきた竹刀を構え、戦いの準備をする。

セイバーの服が微かに発光し、魔力で編まれた鎧を形作る。

「コレでよろしいですかシロウ」

「ああ、ここなら鎧を作っても大丈夫なんだな、セイバー」

「はい、問題ありません」

「分かった、じゃあ始めようか」

その一言が俺とセイバーの戦いの始まりとなった。





View Change



やれやれ、まったくシロウは何を考えているのか。
投影魔術も使わず、武器は竹刀一本。
シロウの力量が上がっているのは認めますが、いまだ私とのレベルの差は明白。
よほど画期的な魔術を使わない限り、私には通用することはない。

とはいえ、師としてシロウが何をするのか楽しみではあるのですが。
シロウは根拠もなくこのような事を言う人ではない―――きっと何らかの自信があるのでしょう。


フッと息を吐き、シロウとの間合いを詰める。
目の前のシロウの姿はいつもどおり。

「こうして見合っていても始まりません。
―――先手を取らせてもらいます」

言うが早いか私は素早く間合いを詰め、そのままの勢いで下段から切り上げる。

シロウは手に持つ竹刀で必死に弾く。
それをきっかけに剣の戦いは乱打戦に持ち込まれた。



私とシロウの稽古は常に予測戦。
お互いの先の先を読みあい。その読みに反応できなかった方が負ける。
とはいえ、私がシロウに負けたことは今まで一度もない。
まだまだ私にはシロウの及ばぬ膨大な経験があるのだ。

現にこの斬り合いでも私が完全に有利に立っている。
シロウは私の竹刀を捌くので精一杯だ。
ならばいつものように徐々に速度を上げて、シロウを追い詰めていくだけだ。

その思惑通り、私は徐々に剣を振る速度を上げていく。
耐え切れなくなったシロウが、捨て身の攻撃に来た時が最後。
それがいつものパターンでもある。


「ハッ!」


私の下段からの一撃を受けきれず、シロウは竹刀を頭上高く弾き飛ばされた姿勢となる。
そして、その体勢から無理やり竹刀を私の頭上に向けて振り下ろしてきた。

どうやらこの竹刀には魔力が籠められているらしい。
当たればそれなりの威力があるのかもしれないが、そのような捨て身の攻撃が私に通じる筈もない。
スッと半歩だけ下がり、次の瞬間、度し難い隙を露呈したシロウに一撃を見舞いする。

それでこの模擬戦も終わりの筈だった。

しかし、私の予想に反してシロウの剣はそのまま地面に穿たれた。

魔力が反応し、炸裂弾のように地面が破裂する。
同時に激しい砂煙と爆音。


「くっ、目くらましですか!?」


予想だにしていなかったその戦法に、少しだけ体勢を崩してしまう。
目の前には視界いっぱいに砂煙が立ち昇り、シロウの姿はこちらからはまったく見えない。

「まさかシロウがこのような手を使ってくるとは―――!」

卑怯な手段とは思わない。
ただシロウはこういう戦法は好まないと思っていた。

即座に体勢を立て直し、そのまま後方に引く。

それと同時に砂煙から飛び出す光弾ライトニングアロー

「弾!?」

それは三発の弾丸だった。
如何なる魔力で作られているのだろう。
その弾はいまだ立ち上る砂煙をかき消してこちらに向かってくる。
三連、しかも水平に並んで私の胸を狙う。
弾丸と見間違うほどの凄まじいスピードだ。

瞬時に反応した私はその場にしゃがむ。
頭上を越えて飛び去る弾を確認する間もなく次弾が迫る。

地に伏せる私を見越したその弾丸はまたも三連。
しかもご丁寧に先程の水平とは違う軌跡、三角トライアングルに放たれている。
私に残された選択肢は上に跳ぶか、剣で弾くか。


「くっ、だが甘いっ!」

如何なる魔力で作られているかわからないのだ。
一発たりとも喰らうわけにはいかない。
私は竹刀で弾を払うよりも、頭上に跳んで回避を選んだ。
それは私の戦いの経験に従った選択だった。

一息で跳んだ高さは二メートル。
頭上から見下ろす砂煙は晴れつつある。
しかし晴れた空間の向こうに弓を構えるシロウの姿を確認して、私は驚愕と共に戦慄した。

「しまった。罠っ!?」

地に足の着かない今の私ではシロウの次弾を避けることはできない。

シロウは素早い動きで最後の矢を放つ。
その矢は今までと違い一射のみ。

ただ違うのはその圧倒的なスピード。

今までの矢が弾丸だとすると、この矢は中空の流星シューティングアロー
細長い流星となって、弓より放たれたその矢は私の胸に吸い込まれる。


―――死


瞬時に死を感じ、空中で強引に身を翻す。
無理な旋回に体のあちこちから悲鳴が聞こえてくるが関係ない。
確かな死の予感の前に他の犠牲など何の意味もないのだから。

だが、それでも流星を完全に避けるには足りなかった。
胸を狙われたその矢は、僅かにゴールを変えて私の肩に命中した。

肩が吹き飛ぶ!?
そう感じた。
どのような魔力で作られた矢かは分からない。だが、あれほどのスピードで放たれた矢なら間違いなく肩が吹き飛ぶ。

私は覚悟した。

しかし次の瞬間、矢に籠められた魔力は藻屑のように消え去り、当然のように私の体も無傷だった。

なにがなんだか分からない。
そのまま空中で身を翻し、地面に着地する。

目の前にはいまだ弓を構えるシロウが立っている。
そして、私が状況を把握する前に、シロウの口から模擬戦の終了を告げられた。

「うーん、今のは一本取ったって言えるのかな?胸を狙ったんだけどなー。
なんかあんまり嬉しくないぞ、俺。
まぁ、セイバーから一本取るのはまた今度って事で、今日はこの辺で勘弁してくれよ、セイバー」

目の前で弓を下ろし、無邪気に笑うシロウ。
口ではあんなコトを言っているが、今の戦いはそんな甘いモノではなかった。

戦慄した。
死を覚悟した。

今のシロウの一撃は間違いなく私の心を恐怖させたのだ。

「シロウ……最後の矢はなんだったのですか?」

「ん、あー、あれはセイバーの目の前に転がっているそれだよ」

私の目の前には一本の枯れ枝が落ちていた。

「ま、まさか、この枝ですか!?あれほどの、流星と見紛う程の一撃が……」

「もちろんそのまま射たわけじゃないぞ。
ちゃんと魔力でコーディングして飛ばしたんだ。その証拠にセイバーの体には傷一つないだろ」

その通りだった。
私の体には傷一つない。魔力でコーディングされた矢ならば私の鎧を突破する事はできない。
あの時の無力化キャンセルはそのせいなのだろう。

シロウはそのまま説明を続ける。

「この弓は竹刀に強化を3重で重ねたものだ。
二度放った三連は、ただの魔力の塊。囮だから威力は必要ない。
セイバーを何とか跳ばせて、本命を当てたかったんだ」

くっそー、と心底悔しがるシロウ。
悔しさを隠そうともしない目の前の少年がぼやけて見える。

―――悔しがるのは私のほうだ。
私はシロウの罠にはまり、跳ばされてしまった。
最初の三連を切り払っていればと感じても、後の祭りだ。

私はギリッと歯を噛み、シロウに質問を続ける。

「―――最後の一矢には本来は違うモノを使うのですね?」

「ああ、最後の一矢には偽・螺旋剣カラドボルグを使う。それが……」

「それが、アーチャーの戦法、なのですね。
シロウが夢に見たのはアーチャーだった、というわけですか」

「え!セイバー、アーチャーが偽・螺旋剣カラドボルグを射ることを知ってたのか?」

「当たり前です。とはいえ思い出したのは今ですが。
バーサーカーとの戦いの時、私も一緒だったではないですか」

「うっ、そういえばそうだった。
あの時アイツはセイバーごとバーサーカーを仕留めるつもりだったんだ」

「それはともかくシロウ、今の勝負は私の完全な敗北です。
始める前はシロウがどのように挑んでこようが、負けるはずが無いと油断をしていました。
師として貴方を軽く見ていたことを心から謝罪します」

彼を甘く見ていた―――。
それは事実であり、そして恥ずかしい事だった。
私は素直に負けを認め、シロウに頭を下げた。

「ちょ!ちょっと待ってくれよ、セイバー。
とりあえず頭を上げてくれ。
セイバーにそんなことされたら俺だって困る。
それに、今のはハンディ戦だ。
俺だけが魔力を使って、セイバーは使ってないんだから。
俺はセイバーから剣で一本とって初めて喜べるんだよ」

私の雰囲気の変化を感じたのか、シロウはあたふたと言い訳をする。
その言葉は温かい。ならばこれ以上シロウに余計な気を使わせるわけにもいくまい。

「はい、シロウがそう言うのならこの件はここで終わりにします。
そうですね―――それならば今の戦いで私なりに気づいたコトをお話します」

私の笑顔を見て、シロウも花が咲いたような笑顔を見せる。
その邪気のない笑顔は今までどおりで、これからも変わらず指導よろしくと言っているように見える。

「まず一番の問題点ですが、宝具を矢に使えば周囲の被害が甚大です。
あの時の墓場を思い出してください、着弾点は地が抉れ、周囲は火の海だったでしょう。
私の聖剣エクスカリバーと同じく市街地では使えません。使いどころは慎重に判断しなければならないでしょう」

うんうん、と頷くシロウ。

「その前の三連は見事でした。
わざわざ宝具を使わなくても、あの弓だけでも十分な戦力になると思います。
シロウ?アーチャーは確か八連を使いこなしていたようですが、シロウには使えるのでしょうか?
八連射ならば申し分ない威力です」

「む、無理だよ、さすがに八連は!
そりゃー、もう少しぐらいなら増やせると思うけど、これ以上増やすと狙いが甘くなる」

「ならば、是非にも鍛えたほうがいい。
私が近距離戦闘、リンが遠距離戦闘、シロウは遠近両距離をレンジにすれば、私たちのパーティーとしての戦闘の幅は広がります」

「でも弓矢の練習はそう簡単にはできないぞ、周りに危ないし」

「何を言っているのですか?タイガもサクラも学校で弓を学んでいるのでしょう。
それに聞けば、以前はシロウも一緒に弓を学んでいたという。一言断って練習に参加させてもらえば良いのでは?」

「げげっ、それはちょっと嫌なんだよな。いろいろあって弓を持つのはいいけど、弓道はしたくないんだ」

むむっ、シロウらしくない後ろ向きな発言。

「甘い!シロウは白玉あんみつチョコ饅頭なみに甘いっ!
考えてもみてください!リンが帰ってきたら今までどおり魔術の講義も受けるのでしょう?
そうなったらもう時間は取れなくなります。せめてリンがいない間だけでも鍛錬をするべきだと思います。
もし言いづらいならば私からタイガとサクラにお願いしてみますが……」

「げげげっ、それはもっと嫌だ。
うぅぅ、わかったよー、藤ねえに弓道部の練習後に使わせてもらうよう頼んでみるよ。
弓道部の部長とも知り合いだし、何とかなると思う」

渋々と申し出を受領するシロウ。

まったくいつもは貪欲に強さを求めるくせに、変なところに拘るのですね。
まぁ、シロウらしいといえばシロウらしいのですが。

「そうですね、ではリンが帰ってくる前日にでも成果を見せてもらいましょうか。
普段の魔術講座の時間を弓に当てて、剣の鍛錬は今までどおり夕食後に行いましょう」

うんうん、と頷くシロウ。

「分かった、それで行こう。
じゃあ今日はコレで終わりだな。明日も朝食は二人分用意しておくから。
また明日な。お休み、セイバー」

手を振って遠坂の庭を出て行くシロウ。
その姿を目蓋に収め、遠坂の屋敷に入っていく。

リンが不在だとこんなにも静かなのですね―――

今は不在のマスターを思い、一人寝床に着くのだった。






後書き

ようやく二章完成です。
途中で四章に浮気をしたり、エピローグとか書いちゃったり、随分回り道をしました。
その分三章と四章の間は短くなりそうですけど(四章は今の時点で半分出来ています)

さて二章ですが、なんと未だ凛が出てきません!
コレは由々しき問題でしょう。作者としてもびっくりです。
本来は二章と三章の切れ目を凛が登場するところで切るつもりだったのですが、
バランス的にココできる事にしました。

まだ敵も出てないし・・・三章が長くなりそうです。

今回初の試みとして
最後のセイバーと士郎の戦いをセイバー視点で書いています。
セイバーの一人称って難しい……
しかし、それ以上に連載って難しい……

というわけで何とか第二章<弓と剣>も書きあがりました。
評判はどうなることやら?
今回は触りだけですが、三章からはバトルシーンがメインになります。

果たして伏線を上手くまとめられるか本当に作者が一番心配です。

では、ココまでお読みいただいた皆様。
もしよろしければ『三章』『四章』と読んでくれると嬉しいです。

なるべく早めに続きを公開できるよう、一筆入魂でがんばりたいと思います。

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